中小企業の節税対策の1つとして、妻へ給与を支払って所得を分散することは有効な方法です。
この方法が有効なのは、所得に対する課税が累進課税制度となっているからです。この制度のしくみは簡単に述べると、所得額が多いほど税率がアップするのです。したがって、1人に所得を集中させるよりも、配偶者に給与を支払うことで所得分散を行い、低い税率を有効活用するとトータルで支払うべき税金の額を抑えることができます。
また、配偶者を課税対象にしたくない場合でも、給与所得控除65万円や基礎控除38万円があるので、年間103万円までの給与額であれば、配偶者への所得税は非課税となります。また、配偶者が社会保険料を支払ったり寄付をしたりしている場合ではこれらがさらに控除されるケースがあるので、節税効果がよりいっそう大きくなります。
もちろん、配偶者に給与を支払う異常は何らかの形で中小企業の経営に配偶者がかかわっている状態にするべきですが、中小企業の基本的な経理作業や電話応対などの事務作業は比較的身につけやすい業務であるため、基本的な業務手順を教えてしまいさえすれば、配偶者がそれほど苦労せずにこなせるケースが多いです。協力させられる配偶者としても、中小企業が所得分散を活用して節税し、利益額が増大すれば相手の所得も増えると考えられるのでメリットがあります。
また自分自身も給与を得ることで健康保険や年金保険の面でも自己負担額が減ったり、今後支給される額が増えたりする直接的なメリットもあります。中小企業、妻、夫の3者ともにトクになるので、不満も生まれにくいです。すでに雇用している従業員がいる中小企業では妻を雇用することによって生じる追加的な事務作業はそれほど難しいものではないため、少ない手間で節税することができます。累進課税制度は所得の再分配機能を有しており、格差是正が叫ばれる状況を考えると今後も継続すると想定されます。積極的に所得分散を行ってトータルで税金を節約していきましょう。